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尾張廼家苞 恋歌四 7

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尾張廼家苞 四之下                               権中納言公經 あはれなる心のやみのゆかりともみし夜の夢を誰かさだめむ 君や来し我や行けむおもほえず夢かうつゝ              かねてかさだめてか。云々。かへし、かきくら す心のやみにまよひにまよひにき夢うつゝ          とは世人さだめよ。     云々。此二首をとれり。君やこしの                                    哥はこゝに用 なし。かきくらすの哥は、夢と いひてさだむるといふ出所なり。あはれなる心は人をあはれとおもふ心也。 夢を心のやみのゆかりうといいふは、まづ逢とみる夢は、あはれ と思ふ心からみれば、心のゆかり也。さて夢はよるみるものな れば、闇のゆかり也。みな此説のごとくなるべけれどとかれたるさましたゝ              かにて老荘などいふ書もてあつかふらんが如く至理に 出てかゝる物には 似合しからず。  四ノ句は一夜逢見し事也。さる                         事也。結句は、本歌は 世人定めよとあれども、かやうにむづかしき古               歌のとり様はなき事也。此夢をわが人をあは れとおもふ心のやみのゆかりぞとは誰か定めむといへるにて、 落着は我かくふかく思ふ心のやみを、思ふ人のおしはかりて、また あはかしとねがへども、人はさもあらじと歎たる意也。見し夜の 夢をさだむるは、本歌に夢うつゝとはこよひさだめよとあ るを以て、又逢事にとれるにて、心のやみのゆかりと定 むるは、人のわが深くおもふ心をおしはかりて、人逢をいへり。一首の                                       こゝろは 一夜合見し夢のやうなる事は、アヽハヤいとをしいと心が闇になる縁で有た と人にいはぬ事なればたが判断せいぞ君こそしりてうつゝとおぼさめと也。                   通具卿 ちぎりきやあかぬ別に露置しあかつきばかり形見なれとは 露おきし云々とは、別れし時の涙のごとく、今も暁ごと に袖をぬらす。そればかりか形見にてあれとは契らざりし 物をと也。一首の意説       得られたり。 おきしといへる詞、形見に残し置きし縁 あり。けふこれはよく    ひゞきたり。                   寂蓮 うらみわびまたじ今はの身なれども思ひなれにし夕ぐれの雲 上句恨わびぬれば、今は待まじき身なれどもの意也。二ノ句 は今はまたじを打かへしていへる也。すべて詞をあるべきまゝに いひ下してよきと、下上ニ打返していひてまさるとのけぢめあり。 心えおくべし。打かへしていふは曲折にて、          此比の一ッのすがた也。  四ノ句待なれにしといふ意なる を、おもひ馴にしといへる、待といふこと上にある故に、詞をかへていひ て、上なるまつをこゝへもひゞかせて聞せたる格なり。下句は待 馴たる夕暮なれば、今もまたずにはあらずといふ意也。                   冝秋門院丹後 わすれじのことの葉いかになりにけんたのめし暮は秋かぜぞふく 二三の句、秋風のふけば木葉は散うする物故にいへり。いひし                                    言葉の しるしなき をよせたり。秋風は人のこゝろに秋の来てとひこぬよし也。かくの                                   ごとし。    家の百首歌合に  摂政 おもひかねうちぬるよひも有なまし吹だにすさべ庭の松かぜ 初句は、まちわびての意なるを、下にまつ風とある故に、例の ことばをかへたる也。常はおもふニたえ兼の意に              用るを、これはめづらか也。四の句は吹ゆるびだに せよ也。すさびは、進む方にいふが常なるを、これもめづらし。手すさび      口すさびなどいふもあれど、吹すあぶとは異なるが如し。随筆ニみゆ。庭の松 風の音にしきりに待心を催す故に、ねられもせぬよし也。       ※君や来し~。かきくらし~ 伊勢物語 六十九段 狩の使

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