かくばかり
へがたくみゆる
世中に
うらやましくも
すめる月かな
藤原高光ふじわらのたかみつ(940?~994?)
法名如覚。多武峯少将入道と呼ばれる。師輔の子。従五位上右近衛少将。三十六歌仙の一人。 六首
冬歌
天暦の御時神無月といふことを上
におきて歌つかうまつりけるに
神無月風にもみぢの散る時はそこはかとなくものぞ悲しき
戀歌一
人の文遣はしける返事に添へて女に遣はしける
年を經ておもふ心のしるしにぞ空もたよりの風は吹きける
戀歌一
題しらず
秋風にみだれてものは思へども萩の下葉の色はかはらず
雜歌上
題しらず
見ても又またも見まくのほしかりし花の盛は過ぎやしぬらむ
雜歌中
返事 如覚(藤原高光)
白露のあした夕べにおくやまの苔のころもは風もさはらず
雜歌下
御返し 如覚(藤原高光)
ももしきのうちのみ常に戀しくて雲の八重立つ山はすみ憂し