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美濃の家づと 四の巻 恋歌二2

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恋のうた            殷冨門院大輔

もらさばや思ふ心をさてのみはえぞやましろのゐでのしがらみ

めでたし。 四の句やまじといふには、ぞ°もじてにをは

かなはぬやうなれど、これは山城へいひかけたるなれば、難

ならじ。えもといひてはよはし。

和歌所哥合に忍恋     雅經

きえねたゞしのぶの山のみねの雲かゝる心のあともなき迄

めでたし。 初句は、ひたぶるにおもひ死ねと、うちすてゝ

いふ詞にて、死ねを、雲の縁にてきえねとはいへるなり。さて

かゝる所にいふた°ゞ°は、すべてひたぶるにといふ意にて、俗言

にいッそのことにといふがごとし。 かゝるは、かやうなる

にて、忍びて思ふをいふ。 心の跡もなきまでとは、なき跡

に、執着の念ものこらぬまでに、きえはてよなり。

千五百番哥合に       通光卿

限あればしのぶの山のふもとにも落葉がうへの露ぞ色づく

めでたし。詞めでたし。 初句は、忍ぶも、しのばるゝ

かぎりの有て、つひには忍びはてられぬ物なれば、といふ意に

いへるなり。 麓といへるは、落葉のよせにて、又忍ぶ山を

はなれて、あらはれたる意をもこめたるべし。 さて

梢の紅葉にても、おなじことなるべきに、落葉といへるは、程

をへてはてにはといふ意也。又落葉とのみとてもたりぬ

べきに、露をいへるは、涙の色の、つひには紅になれるよしにて、

涙の色のかはらぬほどは、しのぶれども、紅になりては、え忍び

あへぬ意なり。詞ごとに其意よくかなひて、露ばかりもいたづら

なることのまじらぬ哥也。すべて歌は、かやうにいたづらなる

詞にまじへず、一もじといへどもよしあるやうによむ

べきわざぞかし。

ながめわびそれとはなしに物ぞおもふ雲のはたての夕暮のそら

本歌、√夕暮は雲のはたてに物ぞ思ふ云々。 それとはなし

にとは、本哥のやうに、天つ空なる人をこふとにはあらで

といふ意なり。 或抄に、さしてつらしともうらめし

ともなく、と注せるは、いみじきひがごとなり。

 

※√夕暮は雲のはたてに~
古今集 恋歌一
 題しらず            読人しらず
夕ぐれは雲のはたてに物ぞ思ふあまつそらなる人をこふとて

※或抄に、 不明


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