忍びやかに聞え給。よういなど人にはをと
細いつ比參り給べきぞと也孟是
り給はず、いとめやすし。まいり給はんほど
より内打陣消息の詞也 抄内々
のあない、くはしきさまもえきかぬを、う
にて我にきかせ給へと也 抄内打陣はよろづ
ち/\にの給はんなんよからん。何事も人
源に担置給へばさし出がましきあつかひもえせず心もとなきと也
めにはゞかりて、えまりきず。きこえぬこ
とをなん、中々いぶせくおぼしたるなどかた
かさねて柏木の詞也。兄弟としらで文
りきこえ給ついでに、いでやおこがましき
まいらせし事也
こともえぞきこえさせぬや。いづかたにつ
けても、哀をば御らんじすぐすべくやはあ
りけると、いよ/\うらめしさもそひ侍かな。
細内々の方也
まづは今夜などの御もてなしよ。きたおも
細宰相などこそ物隔給ふべけれと也
てだつかたにめしいれて、君達゙こそめざま
頭注
いづかたにつけても 細頭中将
の詞。兄弟と云。又くはしき
事はしらで文など參
らせし事かた/"\にと也
まづはこよひなど 細へだて
なくうち/\へも參りぬべ
きものをと也。孟外ざま
むきにし給ふと也。
北おもでだつかた 河北面は
孟末/"\の人となり共かたらはばやと也外ざま
しくも覚しめさめ、しもづかへなどやうの
を恨詞也
人々゙とだに、うちかたらはゞや。またかゝる
やうはあらばかく、さま/"\にめづらしき世
なりかしと、うちかたぶきつゝ、恨みつゞけた
細柏木のゝ給ふさまを女房の玉かづらへ申也
るもおかしければ、かくなんときこゆ。げに人
ぎゝをうちつけなるやうにやと、はゞかり侍
るほどに、年ごろのむもれいたさをも、あき
実父に逢奉ぬ已然よりかへりて覚束なきとの心也
らめ侍らぬは、いと中々なることおほくなん
細点
と、たゞすくよかにきこえなし給ふに、まば
ゆくて、よろづをしこめたり。
柏
いもせやまふかき道をば尋ねずてをだえ
哢哥より詞につけ詞より哥につゞける
の橋にふみまどひける。よとうらむるも人
物語の躰也
頭注
内々心也。南を晴の方と
する故也。
げに人ぎゝを 細つもり
たる事をも申たけれ
どなをざりにてはなき
と也。抄源の御方に玉かづら
のおはしながら、兄弟などゝ
俄にむつび給はんはうちつ
なるやうやうならんと人聞を
憚りて對面なきよしを
の給ふ也。
いもせ山 細いもせは兄弟を
いへり。兄弟ともしらで
文など參らせたるよ
と也。をだえの橋には心
はなし。たゞふみまよふと
いふ恋によせたる斗也。古今に√つの国のなにはおもはず山城のとはにあひみん事を
のみこそといへる名所二を讀る此作例なるべし。孟柏木の哥也
忍びやかに聞え給ふ。用意など、人には劣り給はず、いとめや
すし。
「參り給はん程の案内、詳しき樣もえ聞かぬを、内々に宣はん、
なんよからん。何事も人目に憚りて、え參り来ず。聞こえぬ事
をなん、中々いぶせくおぼしたるなど語り聞こえ給ふ次いでに、
「いでや、烏滸がましき事もえぞ聞こえさせぬや。いづ方につ
けても、哀をば御覽じ過ぐすべくやは有りけると、いよいよ恨
めしさも添ひ侍るかな。先づは、今夜などの御もてなしよ。北
面だつ方に召し入れて、君達こそ目覚ましくも覚し召さめ、下
仕へなどやうの人々とだに、うち語らはばや。また、かかるや
うはあらばかく、樣々に珍しき世なりかし」と、うち傾きつつ、
恨み続けたるも可笑しければ、かくなんと聞こゆ。
「げに人聞きを、うちつけなるやうにやと、憚り侍る程に、年
比の埋もれいたさをも、諦め侍らぬは、いと中々なること多く
なん」と、ただすくよかに聞こえなし給ふに、目映くて、万押
し込めたり。
妹背山深き道をば尋ねずて緒絶の橋にふみ惑ひける よ」と恨むるも人 ※古今に√つの国の 古今集 恋歌四 題しらず よみ人知らず つのくにのなにはおもはず山しろのとはにあひ見むことをのみこそ 備考:難波と何は、山城の鳥羽と永久を掛けている。 和歌 柏木頭中将 妹背山深き道をば尋ねずて緒絶の橋にふみ惑ひける よみ:いもせやまふかきみちをばたずねずておだえのはしのふみまどいける 意味:貴女と私が、妹背山の樣に、兄弟という深い事情も知らず、仲が絶えると言う緒絶の橋の如く、文を送ってしまって、惑っておりました。 備考:大島本では、「まよひける」。妹背山は、紀の国(和歌山県伊都郡かつらぎ町にある山)(大和の吉野の山と言う説もある)、緒絶の橋は奥州(宮城県大崎市古川三日町の橋)の歌枕。遠隔地の二つの歌枕を使う例は、稀有。踏みと文の掛詞。踏みは橋の縁語。 略語 ※奥入 源氏奥入 藤原伊行 ※孟 孟律抄 九条禅閣植通 ※河 河海抄 四辻左大臣善成 ※細 細流抄 西三条右大臣公条 ※花 花鳥余情 一条禅閣兼良 ※哢 哢花抄 牡丹花肖柏 ※和 和秘抄 一条禅閣兼良 ※明 明星抄 西三条右大臣公条 ※珉 珉江入楚の一説 西三条実澄の説 ※師 師(簑形如庵)の説 ※拾 源注拾遺
妹背山深き道をば尋ねずて緒絶の橋にふみ惑ひける よ」と恨むるも人 ※古今に√つの国の 古今集 恋歌四 題しらず よみ人知らず つのくにのなにはおもはず山しろのとはにあひ見むことをのみこそ 備考:難波と何は、山城の鳥羽と永久を掛けている。 和歌 柏木頭中将 妹背山深き道をば尋ねずて緒絶の橋にふみ惑ひける よみ:いもせやまふかきみちをばたずねずておだえのはしのふみまどいける 意味:貴女と私が、妹背山の樣に、兄弟という深い事情も知らず、仲が絶えると言う緒絶の橋の如く、文を送ってしまって、惑っておりました。 備考:大島本では、「まよひける」。妹背山は、紀の国(和歌山県伊都郡かつらぎ町にある山)(大和の吉野の山と言う説もある)、緒絶の橋は奥州(宮城県大崎市古川三日町の橋)の歌枕。遠隔地の二つの歌枕を使う例は、稀有。踏みと文の掛詞。踏みは橋の縁語。 略語 ※奥入 源氏奥入 藤原伊行 ※孟 孟律抄 九条禅閣植通 ※河 河海抄 四辻左大臣善成 ※細 細流抄 西三条右大臣公条 ※花 花鳥余情 一条禅閣兼良 ※哢 哢花抄 牡丹花肖柏 ※和 和秘抄 一条禅閣兼良 ※明 明星抄 西三条右大臣公条 ※珉 珉江入楚の一説 西三条実澄の説 ※師 師(簑形如庵)の説 ※拾 源注拾遺