新古今和歌集 巻第十九 神祇歌
げきやうし給てとしるせり
人しれずいまや/\とちはやぶる神さぶるまで君をこそまて
この哥は待賢門院堀河やまとのかたより
熊野まうで侍けるに春日へまいるべき
よしの夢をみたけれど後まいらむと
おもひてまかり過にけるをかへり侍けるに
託宣し給けるとなむ
みちとほしほどもはるかにてだゝれり思おこせよわれも忘れじ
この哥は陸奧にすみける人の熊野へ三年
まうでむと願をたてゝまいりて侍けるがいみ
じくくるしかりければいまふたゝびをいかにせん
と歎きて御前に臥したりける夜の夢に見えけるとなむ
読み:ひとしれずいまやいまやとちはやぶるかみさぶるまできみをこそまて
意味:密かに、今か今かと来るのを思って、年老いた神の姿に似るくらい長い時を貴女の参詣するのを待っていたのですよ
備考:新古今注
読み:みちとおしほどもはるかにへだたれりおもいおこそよわれもわすれじ 隠
意味:汝は年老いていて、陸奥から熊野は道が遠く、距離も遙かに隔てている。再度の参詣するのは難しいから、常に我を思い起こして祈願しなさい。そうすれば汝を我も忘ず守護しよう。
備考:袋草子には「陸奥国より年ごとに参詣しける女の年老いたりし後、夢に見たる歌なり」。新古今注
平成27年8月7日 壱