やますか。はたまた妄心のいたり
狂せるか。その時心さらにこたふる
ことなし。たゝかたはらに舌根
をやとひて不惜のあみたふ両三返
をまうしてやみぬ。于時建暦
のふたとせやよひのつこもりの
ころ桑門蓮胤とやまのいほり
…してこれをしるす。 勍雲
(自ら)
悩ますか。
将又、妄心の至り狂せるか。
その時、心更に答ふる事無し。
只、傍らに舌根をやとひて阿弥陀ふ両三返を申して止みぬ。
時に、建暦の二年弥生の晦日の比、桑門蓮胤、外山の庵【に】して是を記す。
※【に】は大福光寺本により補う。
(参考) 大福光寺本
ナヤマスカ
ハタ又妄心ノイタリテ狂セルカ
ソノトキ心更ニコタフル事ナシ
只カタハラニ舌根ヲヤトヒテ不請阿弥陀仏両三遍申テヤミヌ
于時建暦ノフタトセヤヨヒノツコモリコロ桑門ノ蓮胤トヤマノイホリニシテコレヲシルス