歌枕名寄 大和
春日
746 第七 賀歌 家に歌合し侍りけるに春の祝のこころをよみ侍りける 攝政太政大臣 春日山みやこの南しかぞおもふ北の藤なみ春にあへとは
1793 第十八 雜歌下 春日の社の歌合に松風といふことを 藤原家隆朝臣 春日山谷のうもれ木朽ちぬとも君に告げこせ峰のまつかぜ
10 第一 春歌上 堀河院御時百首奉りけりに殘りの雪のこころをよみ侍りける 權中納言國信 春日野の下萌えわたる草のうへにつれなく見ゆる春のあわ雪
994 第十一 戀歌一 女に遣はしける 在原業平朝臣 春日野の若紫のすりごろもしのぶのみだれかぎり知られず
1898 第十九 神祇歌 (入道前關白太政大臣)家に百首歌よみ侍りける時神祇の心を 皇太后宮大夫俊成 春日野のおどろの道のうもれみづ未だに神のしるしあらはせ
22 第一 春歌上 題しらず 凡河内躬恆 いづれをか花とは分かむふるさとの春日の原にまだ消えぬ雪
飛火野
13 第一 春歌上 崇院に百首歌奉りける時春の歌 前參議長 若菜摘む袖とぞ見ゆるかすが野の飛火の野邊の雪のむらぎえ
佐保
529 第五 秋歌下 題しらず 曾禰好忠 入日さす佐保の山べのははそ原曇らぬ雨とこの葉降りつつ
574 第六 冬歌 寛平御時后の宮の歌合に よみ人知らず 神無月しぐれ降るらし佐保山のまさきのかづら色まさりゆく
1896 第十九 神祇歌 文治六年女御入内屏風に春日祭 入道前關白太政大臣 今日まつる神のこころや靡くらむしでに波立つ佐保の川風
吉野
100 第二 春歌下 千五百番歌合に春の歌 皇太后宮大夫俊成 いくとせの春に心をつくし來ぬあはれと思へみよし野の花
79 第一 春歌上 題しらず 西行法師 よし野山さくらが枝に雪降りて花おそげなる年にもあるかな
86 第一 春歌上 花歌とてよみ侍りける 西行法師 吉野山去年のしをりの道かへてまだ見ぬかたの花を尋ねむ
1465 第十六 雜歌上 世を遁れて後百首歌よみ侍りけるに花歌とて 皇太后宮大夫俊成 今はわれ吉野の山の花をこそ宿のものとも見るべかりけれ
1617 第十七 雜歌中 題しらず 西行法師 吉野山やがて出でじと思ふ身を花ちりなばと人や待つらむ
1616 第十七 雜歌中 五十首歌奉りし時 前大僧正慈圓 花ならでただ柴の戸をさして思ふ心のおくもみ吉野の山
588 第六 冬歌 題しらず 俊惠法師 み吉野の山かき曇り雪ふればふもとの里はうちしぐれつつ
1475 第十六 雜歌上 題しらず 法印幸 世をいとふ吉野の奧のよぶこ鳥ふかき心のほどや知るらむ
387 第四 秋歌上 題しらず 從三位頼政 今宵たれすず吹く風を身にしめて吉野の嶽の月を見るらむ
133 第二 春歌下 最勝四天王院の障子に吉野山かきたる所 太上天皇 みよし野の高嶺のさくら散りにけり嵐もしろき春のあけぼの
158 第二 春歌下 百首歌奉りし時 藤原家隆朝臣 吉野川岸のやまぶき咲きにけり嶺のさくらは散りはてぬらむ
991 第十一 戀歌一 題しらず よみ人知らず 音にのみありと聞きこしみ吉野の瀧は今日こそ袖に落ちけれ
1 第一 春歌上 春立つこころをよみ侍りける 攝政太政大臣 みよし野は山もかすみて白雪のふりにし里に春は來にけり
92 第一 春歌上 題しらず 藤原家衡朝臣 吉野山はなやさかりに匂ふらむふるさとさらぬ嶺のしらくも
147 第二 春歌下 殘春のこころを 攝政太政大臣 吉野山花のふるさとあと絶えてむなしき枝にはるかぜぞ吹く
121 第二 春歌下 百首歌めしし時春の歌 源具親 時しもあれたのむの雁のわかれさへ花散るころのみ吉野の里
483 第五 秋歌下 擣衣のこころを 藤原雅經 みよし野の山の秋風さ夜ふけてふるさと寒くころもうつなり
97 第一 春歌上 千五百番歌合に 正三位季能 花ぞ見る道のしばくさふみわけて吉野の宮の春のあけぼの
654 第六 冬歌 題しらず 湯原王 吉野なるなつみの川の川淀に鴨ぞ鳴くなる山かげにして
70 第一 春歌上 題しらず 輔仁親王 みよし野のおほ川のべの古柳かげこそ見えね春めきにけり
淀
72 第一 春歌上 建仁元年三月歌合に霞隔遠樹といふことを 權中納言公經 高瀬さす六田の淀のやなぎ原みどりもふかくかすむ春かな
清河原 ※歌枕としては疑問
641 第六 冬歌 題しらず 山部赤人 うばたまの夜のふけ行けば楸おふるき川原に千鳥鳴くなり
葛城
74 第一 春歌上 千五百番歌合に春歌 藤原雅經 しら雲のたえまになびくあをやぎの葛城山に春風ぞ吹く
561 第六 冬歌 春日社歌合に落葉といふことをよみ奉りし 藤原雅經 移りゆく雲にあらしの聲すなり散るかまさ木のかづらきの山
541 第五 秋歌下 題しらず 柿本人麿 飛鳥川もみぢ葉ながる葛城の山の秋かぜ吹きぞしくらし
1061 第十一 戀歌一 女に遣はしける 藤原實方朝臣 いかにせむくめぢの橋の中空に渡しも果てぬ身とやなりなむ
87 第一 春歌上 和歌所にて歌つかうまつりしに春歌とてよめる 寂蓮法師 葛城や高間のさくら咲きにけり立田のおくにかかるしら雲
990 第十一 戀歌一 題しらず よみ人知らず よそにのみ見てややみなむ葛城や高間の山のみねのしら雲
立田山
85 第一 春歌上 題しらず 中納言家持 行かむ人來む人しのべ春かすみ立田の山のはつざくら花
90 第一 春歌上 八重桜を折りて人の遣はして侍りければ 道命法師 白雲のたつたの山の八重ざくらいづれを花とわきて折らまし
566 第六 冬歌 五十首歌奉りし時 宮内卿 からにしき秋のかたみやたつた山散りあへぬ枝に嵐吹くなり
984 第十 羇旅歌 詩を歌にあはせ侍りしに山路秋行といふことを 前大僧正慈圓 立田山秋行く人の袖を見よ木木のこずゑはしぐれざりけり
527 第五 秋歌下 入道前關白太政大臣の家に百首歌よみ侍りけるに紅葉を 皇太后宮大夫俊成 心とや紅葉はすらむたつた山松は時雨に濡れぬものかは
451 第五 秋歌下 題しらず 俊惠法師 立田山梢まばらになるままに深くも鹿のそよぐなるかな
530 第五 秋歌下 百首歌奉りし時 宮内卿 立田山あらしや峯によわるらむわたらぬ水も錦絶えけり
302 第四 秋歌上 中納言中將に侍りける時家に山家早秋といへるこころをよませ侍りけるに 法性寺入道前關白太政大臣 朝霧や立田の山の里ならで秋來にけりとたれか知らまし
神南備
194 第三 夏歌 題しらず よみ人知らず おのがつま戀ひつつ鳴くや五月やみ神なび山の山ほととぎす
285 第四 秋歌上 題知らず 中納言家持 神なびのみむろの山の葛かづらうら吹きかへす秋は來にけり
岩瀬山
1088 第十二 戀歌二 戀歌あまたよみ侍りけるに 後大寺左大臣 かくとだに思ふこころをいはせ山した行く水の草がくれつつ
布留
96 第一 春歌上 千五百番歌合に 右衞門督通具 いそのかみふる野のさくら誰植ゑて春は忘れぬ形見なるらむ
88 第一 春歌上 題しらず よみ人知らず いそのかみ古き都を來て見れば昔かざしし花咲きにけり
1028 第十一 戀歌一 和歌所歌合に久忍戀のこころを 攝政太政大臣 いそのかみふるの神杉ふりぬれど色には出でず露も時雨も
581 第六 冬歌 冬の歌の中に 太上天皇 深あらそひかねていかならむ間なくしぐれのふるの神杉
660 第六 冬歌 冬歌あまたよみ侍りけるに 權中納言長方 初雪のふるの神杉うづもれてしめゆふ野邊は冬ごもりせり
993 第十一 戀歌一 題しらず 柿本人麿 石の上布留のわさ田のほには出でず心のうちに戀ひや渡らむ
171 第二 春歌下 題しらず 皇太后宮大夫俊成女 いそのかみふるのわさ田をうち返し恨みかねたる春の暮れかな
高円
383 第四 秋歌上 雲間微月といふことを 堀河院御歌 しきしまや高圓山の雲間よりひかりさしそふゆみはりの月
373 第四 秋歌上 法性寺入道前關白太政大臣家の歌合に野風を 藤原基俊 高圓の野路のしの原末さわぎそそや木がらし今日吹きぬなり
331 第四 秋歌上 守覺法親王五十首歌よませ侍りけるに 顯昭法師 萩が花まそでにかけて高圓のをのへの宮に領巾ふるやたれ
桧原
20 第一 春歌上 題しらず 中納言家持 まきもくの檜原のいまだくもらねば小松が原にあわ雪ぞ降る
三輪山
1327 第十四 戀歌四 攝政太政大臣家百首歌合に尋戀 前大僧正慈圓 心こそゆくへも知らね三輪の山杉のこずゑのゆふぐれの空
三輪山・初瀬
966 第十 羇旅歌 長月の頃初瀬に詣でける道にてよみ侍りける 禪性法師 初瀬山夕越え暮れてやどとへば三輪の檜原に秋かぜぞ吹く
佐野渡 ※和歌山の歌枕
671 第六 冬歌 百首歌奉りし時 藤原定家朝臣 駒とめて袖うち拂ふかげもなし佐野のわたりの雪のゆふぐれ
初瀬
157 第二 春歌下 百首歌奉りし時 攝政太政大臣 初瀬山うつろう花に春暮れてまがひし雲ぞ峯にのこれる
703 第六 冬歌 入道前關白百首歌よませ侍りける時歳の暮のこころをよみて遣はしける 後大寺左大臣 いしばしる初瀬の川のなみ枕はやくも年の暮れにけるかな
261 第三 夏歌 攝政太政大臣家にて詩歌合しけるに水邊自秋冷といふことをよみける 藤原有家朝臣 すずしさは秋やかへりてはつせ川ふる川の邊の杉のしたかげ
1516 第十六 雜歌上 能宣朝臣大和國まつちの山近く住みける女のもとに夜更けて罷りて逢はざりけるを恨み侍りければ よみ人知らず たのめこし人をまつちの山の端にさ夜更けしかば月も入りにき
336 第四 秋歌上 題しらず 小野小町 たれをかもまつちの山の女郎花秋とちぎれる人ぞあるらし
香具山
2 第一 春歌上 春のはじめの歌 太上天皇 ほのぼのと春こそ空に來にけらし天の香具山かすみたなびく
175 第三 夏歌 題しらず 持統天皇御歌 春過ぎて夏來にけらししろたへの衣ほすてふあまのかぐ山
677 第六 冬歌 守覺法親王五十首歌よませ侍りけるに 皇太后宮大夫俊成 雪降れば峯のまさかきうづもれて月にみがける天の香具山
266 第三 夏歌 雲隔遠望といへるこころをよみ侍りける 源俊頼朝臣 十市には夕立すらしひさかたの天の香具山雲隱れ行く
阿太師野
1847 第十八 雜歌下 百首歌に 式子内親王 暮るる間も待つべき世かはあだし野の末葉の露に嵐たつなり
真野
332 第四 秋歌上 題しらず 祐子内親王家紀伊 置く露もしづこころなく秋風にみだれて咲ける眞野の萩原
明日香
986 第十 羇旅歌 初瀬に詣でて歸さに飛鳥川のほとりに宿り侍りける夜よみ侍りける 素覺法師 故郷へ歸らむことはあすか川わたらぬさきに淵瀬たがふな
896 第十 羇旅歌 和銅三年三月藤原の宮より奈良の宮に遷り給ひける時 元明天皇御歌 飛ぶ鳥の飛鳥の里をおきていなば君が邊は見えずかもあらむ
伏見
476 第五 秋歌下 題しらず 前大僧正慈圓 衣うつおとは枕にすがはらやふしみの夢をいく夜のこしつ
292 第四 秋歌上 守覺法親王五十首歌よませ侍りける時 藤原家隆朝臣 明けぬるかころもで寒しすがはらや伏見の里の秋の初風
柏木社
1046 第十一 戀歌一 返し 馬内侍 時鳥しのぶるものをかしは木のもりても聲の聞えけるかな