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前田家本 閑居友4 煙立ち昇りて行く先も涙に隠れ塞がり

けふりたち乃ほりてゆくさきもなミたに可くれふた

かりいつれ可山河ともわ可れす八しま乃さとにま可

りたりし可はそ乃可ミ見しなおしなと乃

やうにおほえてゆミやのな可にさゝけもちたる物

なし。さてこゝも可なふましとて八しまを

いてゝゆくゑもしらぬうミにう可みておきふし

はなミたにしつミ侍しほとにふねにをそろ志

きも乃とも乃りうちり侍し可は今上おハ人乃

いたきたてまつりて海にいりたまひき。人々或は

神璽をさゝけあるハほうけんおもちてうミに

う可ミてか乃御ともにいりぬとな乃りしこゑハ

かりしてうせにき。乃これるものともめのまへに

い乃ちをうしなひあるハな者にてさま/\にしたゝ

免いましむ。すこしもなさけお乃こす事なし

いま者とてうミにいりなんとせしときハやきいし

すゝりなとふところにいれてしつめにして

煙立ち昇りて、行く先も涙に隠れ塞がり、何れか山河とも分かれず。

八島の里に罷りたりしかば、そのかみ、見し直衣などの様に覚えで、弓矢の中に捧げ持ちたる物無し。

さて、ここも適ふまじとて、八島を出でゝ、行方も知らぬ海に浮かみて、起き伏しは、涙に沈み侍し程に、船に恐ろしき者共乗り移り侍しかば、今上祖母人の抱き奉りて、海に入り給ひき。

人々、或は神璽を捧げ、或は寶剣を持ちて、海に浮かみて、彼の御供に入りぬと名告りし声ばかりして、失せにき。

残れる者共、目の前に命を失ひ、或は縄にて樣々にしたため、いましむ。

少しも情お残す事無し。

今はとて、海に入りなんとせし時は、焼石、硯等懐に入れて鎮にして、


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