新古今和歌集 巻第五 秋歌下 宇治の川霧
第五 秋歌下 堀河院御時百首歌奉りけるに霧をよめる 權大納言公實 ふもとをばく 宇治の川霧たち籠めて 雲居に見ゆる 朝日山かな 読み:ふもとをばうじのかわぎりたちこめてくもいにみゆるあさひやまかな 隠 意訳:麓を宇治の川霧が立ちこめて、隠しているので、雲の上に浮かんでいる樣に見える朝日に映えている朝日山だなあ...
View Article新古今和歌集 巻第十七 雑歌中 宇治川の網代木
第十七 雜歌中 題しらず柿本人麿 もののふの八十うぢ川の 網代木に いさよふ波の 行方知らずも 読み:もののふのやそうじがわのあじろぎにいさよふなみのゆくえしらずも 隠 意訳:(もののふのやそ)宇治川の沢山打ち込まれている網代木に遮られた波は、やがてどこへいったのだろうか。...
View Article新古今和歌集 九代抄 かささぎの渡せる橋
かさゝぎの渡せる橋にをく霜のしろきをみれば夜ぞふけにける 七夕をば烏の橋と成て渡す事あり。此哥、七夕の心にあらず。此哥更に不及記。たゞ霜夜に月も雲もなく星計の夜天にむかひ見ば、必此興有べしとぞ。霜の興を思ふに夜の更たる也。月落烏啼霜満天。
View Article新古今和歌集 巻第四 秋歌上 伏見山の秋初風
巻第四 秋歌上 百首歌奉りし時 皇太后宮大夫俊成 伏見山 松のかげよりみわたせば あくるたのもに 秋風ぞ吹く 読み:ふしみやままつのかげよりみわたせばあくるたのもにあきかぜそふく隠 意訳:伏見山の松の蔭より見渡すと夜が明けようとする田の面に秋風が吹いています。 作者:藤原俊成ふじわらのとしなり1114~1204しゅんぜいとも。法号は釈阿。千載和歌集の撰者で定家の父。...
View Article新古今和歌集 巻第四 秋歌上 雁が音の目覚め
第四 秋歌上 和歌所歌合に田家月といふことを 前大僧正慈圓 雁の來る 伏見の小田に 夢覺めて 寝ぬ夜の庵に月をみるかな 読み:かりのくるふしみのおだにゆめさめてねぬよのいおにつきをみるかな 隠 意訳:雁がやって来ている伏見の田の鳴き声に夢が覚めて、眠れない夜の見張り小屋で月を見ている 作者:じえん1155~1225藤原忠通の子兼実の弟。天台宗の大僧正で愚管抄を著す。...
View Article新古今和歌集 第十三 恋歌三 旅先での行きずりの恋
第十三 戀歌三 題しらず よみ人知らず かりそめに ふしみの野邊の 草まくら 露かかりきと 人に 語るな 読み:かりそめにふしみののべのくさまくらつゆかかりきとひとにかたるな 隠 意訳:軽々しくちょっとでも伏見の野原で旅寝して露がかかった(これこれしかじかな事があった)などと人に言わないでください。 作者:...
View Article新古今和歌集 巻第六 冬歌 夢醒むる竹の下折れ
第六 冬歌 同じ(攝政太政大臣)家にて所の名を探りて冬の歌よませ侍りけるに伏見里の雪を 藤原有家朝臣 夢かよふ 道さへ絶えぬ くれたけの伏見の 里の雪の したをれ 読み:ゆめかようみちさえたえぬくれたけのふしみのさとのゆきのしたおれ隠 意訳:伏見の里では、降り積もる雪に通ってくる道だけでなく、あの人との夢の中の逢瀬も、呉竹が雪で折れる音で覚めさて、途絶えさせてしまいます。...
View Article平家物語 四部合戦状本 序
平家物語 巻一 平家物語巻第一 并序 四部合戦状第三番闘諍 祇薗精舎之鐘ノ聲ヘ有諸行無常響キ娑 羅雙樹ノ花ノ色顯ス盛者必衰理ヲ奢ル人モ不 久如シ春夜ノ之夢ノ武キ者モ終ニハ滅ヒヌ同シ風ノ前ノ塵ニ 祇園精舎ノ鐘ノ声へ 諸行無常響有 沙羅双樹ノ花ノ色 盛者必衰理ヲ顕ス 奢ル人モ久シカラズ、 春夜ノ夢ノ如シ 武キ者モ終ニハ滅ビヌ 風ノ前ノ塵ニ同ジ
View Article筆者不明コレクション 花のみゆき
高陽院にて花の散るを見てよみ侍りける 肥後 萬世をふるにかひある宿なれやみゆきと見えて花ぞ散りける 返し 二條関白内大臣 枝毎能末まて匂ふ葉な麗者散もミ由きと見ゆるなるらむ 近衛つ可さ尓て年久しく成て後うへのを乃こ 友大内能花見尓ま可れりけるによめる 藤原定家朝臣 春をへてミゆき尓なるゝ花の可けふりゆく身をも哀とや思 最勝寺の櫻ハまり乃かゝり尓て久しく成尓しを...
View Article新古今和歌集 新古今集聞書 かささぎの渡せる橋
かさゝぎのわたせる橋にをく霜のしろきを見れば夜ぞ更けにける かさゝぎのはしとは、七夕交會の時わたる橋といへり。かさゝぎとは、ちひさきからすなりといふ。たゞ天上ヲいふなり。かならず霜夜には空晴/\しく見ゆるなり。しかれば下界にも霜ふるなり。たゞ陰陽の心と見えたり。 牧野文庫本
View Article新古今和歌集 新古今和歌集抄 かささぎの渡せる橋
笠鷺の渡せる橋に置霜の白きをみれば夜ぞ更けにける 此かさゝぎの橋は、あまの川と心得べし。七夕によむときは、からすの羽をならべてほしを渡す事と心得るべし。是は霜をよみたれば、七夕の時節には相違するあひだ、空の晴れたる時は天川もさやかにみゆれば、空にも霜の降りたるやうにみゆると也。冬の夜のかんせひの哥也。 都立中央図書館本
View Article前田家本 方丈記 日野の庵5 又、恥づべき人も無し
なし。又はつへき人もなし。こと さらに無言をせされともひとり をれは口業をおさめつかならす 禁戒をまもるとしもなけれと 境界なけれはなにゝつけてか やふらん。もしあとのしらなみに みをよするあしたにはおかのやに ゆきかふふねをなかめて満 沙弥の風情をぬすみもしかつら (妨ぐる人も)無し。 又、恥づべき人も無し。 殊更に無言をせざれども独りをれば口業を修めつ。...
View Article前田家本 方丈記 日野の庵6 桂風葉を鳴らす夕には
かせはをならす夕にはしんやう のえをおもひやりて源ノ都ト叔シヨクの おこなひをならふ。もし餘興あれ はしは/\まつのひゝきに秋風楽を たくへみつのおとに流泉の曲を あやつる。藝はこれつたなけれとも 人のみゝをよろこはしめんとに もあらす。ひとりしらへひとり詠し てみつから心をやしなふはかり (桂)風、葉を鳴らす夕には、潯陽の江を思ひやりて、源都叔の行ひを習ふ。...
View Article前田家本 方丈記 日野の庵7 又麓には一つの柴の庵有り。
なり。又ふもとにはひとつのしは のいおりあり。すなはちこのやま もりかおるところなり。かしこに こわらはあり。とき/\きたりて あひとふらふ。もしつれゝなる時 はこれをともとして遊行すれ は十さい。これは六十。そのよはひこ とのほかなれとこゝろをなくさむ る事これおなしあるひは なり。 又麓には一つの柴の庵有り。 即ちこの山守が居る所也。 かしこに小童有り。 時々来たりて、相訪ふ。...
View Article前田家本 方丈記 日野の庵8 茅花を抜き岩梨を取り
つはなをぬきいはなしをとり ぬかこをもりせりをつむ。あるひ はすそはのたいにいたりておち ほをひろひほくみをつくる。もし 日うらゝかなれはみねによちのほ りてはるかにふるさとのそらを のそみこはたやまふしみのさと とははつかしをみる。勝地はぬしなけ れは心をなくさむるにさわりなし。 茅花を抜き、岩梨を取り、零余子を盛り、芹を摘む。 或は裾輪の田居に至りて、落ち穂を拾ひ、穂組を作る。...
View Article前田家本 方丈記 日野の庵9 歩み煩ひ無く、心遠く至る時は
あゆみわつらひなく心さしとを くいたるときはこれよりみね つゝきすみやまをこえかさとり をすきてあるひはいはまにも うてあるひはいしやまをおかむ もしはまたあはつのはらをわ けつゝせみうたのおきなのあとを とふらひたなかみがはをわたりて せみまろまうちきみがはかを 歩み煩ひ無く志し遠く至る時は、これより峰続き、炭山を越え、笠取を過ぎて、或は岩間に詣で、或は石山を拝む。...
View Article前田家本 方丈記 日野の庵10 帰るさには、折につけつゝ
たつぬ。かへるさにはおりにつ けつゝさくらをかりもみちをも とめわらひをおりこのみをひろ ひてかつはほとけにたてまつり かつはいゑつとゝす。もしよしつか なれはまとの月に故人をしの ひさるのこゑに袖をうるおす。 くさむらのほたるはとをくまき のしまのかゝり火にまかひあか月 (麻呂大夫の墓を)訪ぬ。...
View Article前田家本 方丈記 日野の庵11 暁の雨は自づから木の葉吹くあらしに似たり
のあめはをのつから木のはふくあ らしにゝたり。やまとりのほろ/\ となくをきゝてはちゝかはゝかと うたかひみねのかせきのちかく なれたるにつけてもよにとを さかるほとをしる。あるひは又うつ み火をかきおこして老のね さめのともとす。おそろしき山 ならねはふくろうのあはれむに (暁)の雨は自づから木の葉吹く嵐に似たり。...
View Article前田家本 方丈記 日野の庵12 山中の景気折りに付けつゝ尽くること無し
つけてもやまなかの景気おり につけつゝつくることなし。いはん やふかくしれらん人のためには これにもかきるへからす。おほかた このところにすみはしめしとき はあからさまにとおもひしかとも いますてにいつとせをへたりか りのゐほりもやゝふるやとな りてのきにくちはふかくつち (梟の哀れむに)付けても山中の景気、折に付けつゝ、尽くること無し。 況や深く知れらん人の為には、これにも限るべからず。...
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