歌論 無名抄 非歌仙難歌事
非哥仙哥ノ難じタル事 哥はなにながれたる哥よみならねどことはりをさき としてみゝちかきみちなればあやしの物の心にも をのづから善悪はきこゆるなり。長守云述懐の 哥どもあまたよみ侍し中にざれごとうたに 火おこさぬ夏のすびつの心ちして 人もすさめずゝさまじの身や とよめるを十二になる女子のこれを聞て冬の すびつこそ火のなきは今すこしすさまじけれ。...
View Article歌論 無名抄 思餘自然歌讀事
思餘比自然ニ哥ヨマルヽ事 又心にいたくおもふことになりぬればおのづから哥は よまるゝ也。金葉(集)によみ人しらずと侍かとよ。 身のうさをおもひしとけは冬の夜も とゞこほらぬはなみだなりけり この哥は仁和寺のあはぢのあざりといひける人のいも うとのもとなりけるなま女坊のいたく世をわびて よみたりける哥也。もとより(哥よみ)ならねば又よめる 哥もなし。たゞおもふあまりにおのづからいはれたり...
View Articleカンフー詩 湖岸夏愁
孤舟夕照繋湖杭 一刻蘆波去風涼 春癘三月流巷中 落日帶愁歸獨房 孤舟夕照に湖の杭に繋ぐ 一刻芦の波風涼を去る 春の癘三か月巷中を流る落日となり愁を帯びて独り房(へや)へ帰る カンフー詩 漢詩は、平仄、押韻など規則が多く日本人には馴染み難い。そこで漢詩風の詩を作り、カンフー詩と名付けた。 カンフー映画を見て、気分だけはブルース・リーになったつもりに似ている。
View Article和漢朗詠集 春7 含雑歌上花山院 元禄五年本
かをとめてたれおらざらんむめの花 あやなしかすみたちなかくしそ 躬恒 紅梅 元稹 梅含鷄舌兼紅氣江弄瓊花帯碧文 橘正通 淺紅鮮娟仙方之雪媿色濃香 芬郁妓爐之煙譲薫 前中書王兼明 有色易分残雪底無情難辨夕陽中 紀斉名...
View Article新古今和歌集 延宝二年本 蔵書
新古今和歌集 二巻、三巻、四巻 一巻闕二巻 冬歌~羇旅歌三巻 恋歌一~恋歌五四巻 雑哥上~釈教巻末 真名序延寳二甲寅年暮春吉日延宝二年:1674年延宝二年本文化元年補刻本の元本
View Article鴨長明方丈記之抄 明暦四年本及び序 蔵書
鴨長明方丈記之抄 全 鴨長明方丈記之抄 鴨里之名也。昔城北出雲路有小女浣衣鴨 河一箭流來鴨羽加筈女取歸家挾之檐牙 已而女娠産男父母問其夫女曰無父母以為匿而 不言兒三歳時父母議以為世豈有無父之兒哉 思此里人乎冝具酒膳宴里夫令兒持杯試告言 以此杯置汝父所其得杯之人乃兒父也。於是大 會郷人數爵後令兒送杯兒取杯穿稠人出 堂置簷上鴨箭所父母及諸人怪焉僉曰此矢...
View Article鴨長明方丈記之抄 序1 行川の流れは
行川のながれは絶ずしてしかも本の 水にあらず。よどみにうかぶうたかたは、か つきえかつむすびて、ひさしくとまる事 なし。世中にある人とすみかと、又かくの ごとし。玉しきの都のうちに、むねをならべ いらかをあらそへる、たかきいやしき人 のすまゐは、代々をへてつきせぬものなれ ど、是をまことかとたつぬれば昔有し 家はまれ也。或は大家ほろびて小家 となる。すむ人も是におなじ。ところも...
View Article鴨長明方丈記之抄 序2 二三十人が中に
j 十人が中に、わづかにひとりふたり也。あし たに死し夕にむまるゝならひ、たゞ水の 泡ににたりける。しらずむまれしぬる 人何方より来りて、いづかたへか去。又し らずかりのやどり誰か為にか心を悩し 何によりてか目をよろこはしむる。其あ るじとすみかと、無常をあらそひ 去様いはゞ朝がほの露にことならず あるひは露落て花残れり。残るといへ ども朝日にかれぬ或は花はしぼみて...
View Article鴨長明方丈記之抄 安元の大火1 凡物の心をしれり
凡物の心をしれり、しより四十あまりの春秋を送る間に、世の不思議をみるをやゝたび/“\になりぬ。去安元三年四月廿八日かとよ風はげしく吹てしづかならざりし夜戌のときばかり都のたつみより火出来りて、いぬゐにいたるはては朱雀門大極殿大学寮民部省までうつりて、一夜が程に灰と成にき。火本は樋口富小路とかや病人をやどせるかりやより出来けるとなん。吹まよふ風にとかくうつり行程に、あふぎをひ...
View Article歌論 無名抄 範兼家会優事
範兼家會優ナル事 俊恵云和哥會のありさまのげに/"\しくいふに おほえし事はつぎのところにとりてはちかくは 範兼卿の家の會のやうなることはなし。亭主の さる人にていみじうもてなしてことにふれつゝ れうじならず。人にはぢ道を執してほむべき をば感じそしるべきをば難じこと/"\にゑあ りてみだれがはしきことゆめにもなかりしかば さしいる人もみなそのおもむきにしたがひて...
View Article鴨長明方丈記之抄 安元の大火2 広ろげたる如く末広に成ぬ。
ろげたるごとくすゑひろに成ぬとをき 家は煙にむせび、ちかきあたりは一向ほの ほを地に吹つけたり空には灰を吹たて たれば火の光に映じてあまねく紅なる中 に風に絶えず吹きられたる炎とぶがごとく にして、一二町を越つゝ移行其中の人うつゝ 心ならんや。あるひは煙にむせびてたふれ ふし、或は炎にまぐれてたちまちに 死ぬ或は又わづかに身一、からくしてのがれ たれ共資財をとり出るに及ばず。七珎万...
View Article鴨長明方丈記之抄 安元の大火3 幾十許ぞ
いくそばくぞ此たび公卿の家十六焼たり。 まして其外はかずしらず。すべて都のうち 三分が一に及べりとぞ男女死ぬるもの 数千人馬牛の類ひ邉際をしらず。 人のいとなみみな愚かなる中にさしもあ やうき京中の家を作るとて寶を 費し心を悩ますことは、すぐれてあぢ きなくぞ侍るべき。又治承四年夘月 廿九日のころ、中御門京極の程より大 なる辻風おこりて、六条わたりまていかめ しく吹けること侍き。三四町をかけて...
View Article歌論 無名抄 清輔宏才事
清輔弘才事 勝命云清輔朝臣哥のかたの弘才はかたならぶ人 なし。いまだよもみおよばれじとおぼゆることをわざい とかまへてもとめいでゝたづぬればみなもとよりさ たしふるされたることゞもにてなん侍し。はれの 哥よまんとては大事はいかにも古集をみてこそと いひて万葉集をぞかへす/"\みられ侍し。...
View Article百人一首拾穂抄 藤原清輔 蔵書
藤原清輔朝臣 左京大夫顕輔子。母能登守能遠女。太皇大后宮大進。正 四位下長門守。奥儀抄、和哥初学抄、袋草子等述作の物也。 續詞花集、此人の撰集也。奏覧に及ばずして先朝崩御 のよし奥書にみえたり。鵜本云つら/\おもふに学ぶ べき人の哥の様は清輔亡父卿などにて侍るべし。其姿 むかし今に通じてよろしき体也。幽玄の様にてしかも有...
View Article鴨長明方丈記之抄 辻風1 吹きまくる間に
吹まくる間に其中に籠れる家共 大なるもちいさきも一としてやぶれざるは なし。さながらひらにたふれたるもあり けたはしらばかり残れるも有。又門の上 を吹はなちて四五町が程にをおき又垣を ふきはらひて隣とひとつになせり。いは んや家のうちのたから、かずをつくして空 にあがり。桧皮ぶき板の類ひ、冬の木の 葉のかぜに乱るゝがごとし。塵を煙のごと くふきたてたればすべて目もみえず。をび...
View Article鴨長明方丈記之抄 辻風2 聞えず。かの地獄の業の風なりとも
聞えず。地獄の業風なりともかくこそ はとぞ覚えける家の損亡するのみな らず、これをとりつくろふ間に身をそこな ひかたはつけるものかすをしらず。此風ひ つじさるのかたにうつり行て、おほくの人の 歎きをなせり。辻風はつねに吹物なれど かゝることやはある。たゞごとに非ず。さるべき物の さとしかなどぞうたがひ侍りし。おなじ 年の水無月の比、にはかに都遷侍り き。いと思ひの外なりしこと也。大かた此京...
View Article鴨長明方丈記之抄 遷都1 都と定まりにけるより
都とさだまりにけるより後すでに数百 歳をへたり。ことなくてたやすくあらたま るべくもあらねば、これを世の人たやすからず 愁あへる様ことはりにも過たり。されどとかく いふかひなくて御門より初たてまつりて 大臣公卿悉移り給ひぬ。世につかふるほ どの人誰かひとりも故郷に残らん。官位に思 ひをかけ主君の影をもたのむ程の人 は、一日なりともとく移らんとはげみあへ り。ときをうしなひ世にあまされて、期...
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