唐詩選画本 宮中題 文宗皇帝
きうちうにだいす ぶんそうくはうてい 宮中題 文宗皇帝 輦路生秋草上林花滿枝憑高 何限意無復侍臣知 れんろしうそうをしやうじじやうりんはなえだにみつ たかきによるなんのかぎりのいをまたじしんのしるなし 此詩は、文そうのおしこめられての時の詩也。 れんろの御なり道も、秋のくさかすへ しげり、はるは、上りんに心なく、はるが...
View Article歌論 無名抄 為仲宮城野萩
為仲ミヤギノヽ萩ヲホリテノボル事 この為仲任はてゝのぼりける時みやぎ野の 萩をほりとりてながひつ十二合に入てもて のぼりければ人あまねくきゝて京へいりけ る日は二条のおほぢにこれをみ物にして人 おほくあつまりて車などもあまたゝてりける とぞ。 為仲ミヤギノヽ萩ヲホリテノボル事...
View Article唐詩選画本 勧酒 于武陵
くわんしゆ う ぶりやう 勧酒 于武陵 きみにすゝむきんくつし。まんしやくぢすべからず。 はなひらけばふうゝおゝく、じんせいべつりにたる。 いまそこもとに上だす其さかづきとくと一はい上まずさしだしなされを此のごとく はながひらきても見てたのしむうち、いまにも雨風があれはちりまする人けんも其ごとく...
View Article鴨長明方丈記之抄 序
鴨長明方丈記之抄(嵯峨本系) 行川の流れは絶ずして、しかももとの水にあらず。淀み に浮かぶ泡沫は、かつ消え、かつ結びて、久しくとまる 事なし。世中にある人と栖と、又、かくの如し。 玉敷の都のうちに、棟を並べ、いらかを争へる、高き・ 賤しき人の住ゐは、代々を経て、尽きせぬものなれど、 これをまことかと尋ぬれば、昔有し家は稀なり。或は、...
View Article鴨長明方丈記之抄 安元の大火
凡そ、物の心を知れりしより、四十余りの春秋を送る間 に、世の不思議を見るを、ややたびたびになりぬ。 去(きやつ)安元三年四月廿八日かとよ。風激しく吹て、 静かならざりし夜、戌の時ばかり、都の巽より火出来り て、乾に至る。果ては、朱雀門・大極殿・大学寮・民部 省まで移りて、一夜が程に灰となりにき。火元は、樋口 富小路とかや。病人を宿せる仮屋より、出来けるとなん。...
View Article鴨長明方丈記之抄 治承の辻風
又、治承四年卯月廿九日のころ、中御門京極の程より、 大なる辻風起りて、六条わたりまで、いかめしく吹きけ る事侍き。 三四町をかけて吹きまくる間に、その中に籠れる家ども、 大なるも、小さきも、一つとして破れざるはなし。さな がら平にたふれたるもあり。桁・柱ばかり残れるも有。 又、門の上を吹きはなちて、四・五町が程にを置き、又、 垣を吹き払ひて、隣と一つになせり。いはんや、家の内...
View Article鴨長明方丈記之抄 福原遷都
又、同じ年の水無月のころ、にはかに都遷り侍りき。い と思ひの外なりし事なり。 大方、この京の始めを聞けば、嵯峨天皇の御時、都と定 まりにけるより後、既に数百歳を経たり。事なくて、た やすく改まるべくもあらねば、これを世の人たやすから ず、愁あへる樣、ことはりにも過たり。 されど、とかく言ふかひなくて、御門より初め、奉りて 大臣・公卿、悉く移り給ひぬ。世に仕ふる程の人、誰か...
View Article鴨長明方丈記之抄 養和の飢饉
又、養和のころかとよ。久しくなりて、確かにも覚えず。 二年が間、飢渇して、浅ましき事侍き。或は、春夏ひで り、或は、秋冬大風大水など、よからぬ事ども打つづき、 五穀悉く実らず。空しく春耕し、夏植ふるいとなみのみ 有りて、秋刈り、冬収るそめきはなし。 これによつて、国々の民、或は、地を捨てて境を出で、 或は、家を忘れて山に住む。様々御祈り始まり、なべて...
View Article鴨長明方丈記之抄 元暦の大地震
又、元暦二年のころ、大なゐ震る事侍き。その樣、常な らず。山崩れて、川を埋み、海かたぶきて、陸(くが) をひたせり。土裂けて、水湧き上がり、巌割れて、谷に まろび入る。渚こぐ舩は、波に漂ひ、道行く駒は、足の 立どをまどはせり。いはんや、都のほとりには、在々所 々、堂塔舎廟、一つとして全からず。或は崩れ、或はた ふれたる間、塵灰(ちりはい)立ち上りて、盛りなる煙...
View Article鴨長明方丈記之抄 世の有りにくき事
すべて、世の有りにくき事、我が身と栖との、はかなく、 あだなる樣、かくの如し。いはんや、所により、身の程 に従ひて、心を悩ます事、あげてかぞふべからず。 もし、自づから、身、かなはずして、権門のかたはらに 居る者は、深く喜ぶ事はあれども、大に楽しぶにあたは ず。歎ある時も、声をあげて泣く事なし。進退安からず、 立ち居につけて、恐れおののく、例えば、雀の鷹の巣に...
View Article鴨長明方丈記之抄 大原出家
全て、あらぬ世を念じ過しつつ、心を悩ませることは、 三十余年なり。その間、折々のたがひめに、自ずから、 短き運を悟りぬ。 すなはち、五十の春を迎へて、家を出で、世を背けり。 もとより、妻子なけれは、捨て難きよすがもなし。身に 官禄あらず。何に付けてか、執を留めん。空しく大原山 の雲に、いくそばくの春秋をかへぬる。 ここに、六十の露消え方に及びて、更に、末葉の宿りを...
View Article鴨長明方丈記之抄 日野の庵
今、日野山の奥に跡を隠して、南に仮の日隠しをさし出 だして、竹のすのこを敷き、その物に閼伽棚を作り、中 には西の垣に添て、阿弥陀の画像を安置し奉りて、落日 を請て、眉間の光とす。彼の帳の扉に、普賢並びに不動 の像を掛けたり。北の障子の上に、小さき棚を構へて、 黒き皮籠三・四合を置く。すなはち、和哥・管弦・往生 要集ごとき抄物を入れたり。傍に、箏・琵琶各々一張を...
View Article鴨長明方丈記之抄 仮の庵
大方、この所に住み初めし時は、あからさまと思ひしか ど、今迄に五とせを経たり。仮の庵も、やや古る屋とな りて、軒には朽ち葉深く、土居苔むせり。自づから、事 の便りに都を聞けば、この山に籠り居て後、やんごとな き人の隠れ給へるも、あまた聞こゆ。まして、その数な らぬ類ひ、尽してこれを知るべからず。たびたびの炎上 に亡びたる家、又、いくそばくぞ。ただ、仮の庵のみの...
View Article鴨長明方丈記之抄 余算山の端
大方、世をのがれ、身を捨しより、恨みもなく、恐れも なし。命は、天運にまかせて、惜しまず、厭はず。身を ば、浮雲になずらへて、頼まず、まだしとせず。一期の 楽しびは、転寝の枕の上に極まり、生涯の望みは、折々 の美景に残れり。 それ、三界は、ただ心一つなり。心、若し安からずは、 牛馬七珍も由なく、宮殿望み無し。今、寂しき住ゐ、一 間(いつけん)の庵、自らこれを愛す。自づから都に出...
View Article鴨長明方丈記之抄 目次
鴨長明方丈記之抄(嵯峨本系明暦四年本) 章段及び題は、適宜区分して題名を付け、章段毎にまとめた物。小段はページ毎で、題は概ね最初出て来る文による。小段は、漢字、句読点、送り仮名は、最初は本の通り。それを適宜、漢字又はひらがなに直し、句読点及び送り仮名を付し、この本特有の読み仮名は(...
View Article八雲御抄 明暦二年版 蔵書
八雲御抄 全七冊 巻第一、二、三上、三下 巻第四、五、六 刊行年不明 ※ 八雲御抄 やくもみしょう 日本大百科全書 鎌倉初期の歌学書。順徳(じゅんとく)天皇の著作。1221年(承久3)より前から執筆、承久(じょうきゅう)の乱(1221)後、佐渡の配所で手を加えてまとめられた。六巻。草稿本と再撰(さいせん)本とがあり、内容も若干の相違がある。...
View Article唐詩選画本 秋日湖上 薛瑩 蔵書
らくじつ五こにあそぶ。ゑんはしよ/\にうれふ。 ふちんすせんこのこと。だれともにかとうりうにとはん。 日のくれかたに、五このほとりをながむれば、けむりやなみがたちて、どこ もかも、ものさびしきけしきなり。世の中の事、此なみとおなじく うきしづみの有ものしやか、むかしよりの事。たれをともとしとはん 此ひがしへながるゝ水は、むかしよりかはらぬものなれば、水にとはゞやとなり。 しうじつこじやう...
View Article唐詩選画本 題慈恩塔 荊叔 蔵書
かんこくさんがあり。しんりやうそうじゆふかし。ぼうんせんりのいろ。 ところとしてこゝろをいためしめざるはなし。 ぢをんじのとふに上りて、のぞみ見れば、かんの世よりのやまや河はいまがはらずあり。 しんのしくはうのみさゝぎも、くさ木おひしげりて、 あれはてゝ見ゆ。むかしとは事かわり寂しきけしき なりごとくに夕ぐれの雲がせん里もおなじき見る物こと/\くしろをいためざるはなしとなり。 じおんとうにだいす...
View Article八雲御抄 序及び巻第一目次
八雲抄序 夫和歌者起自八雲出雲之古風、廣于文武 聖武之皇朝、言泉流遠詞林道鮮。其降已 來貴賤翫之道俗携之。然而不学素雪丹 鳥之窓、恐詠三十一字之句。無窺玉渕争知 驪龍之勢。不視上邦誰詠英雄之詞。所以依代〃 記文付家々髄腦、聊抄一篇先達口傳、故人教 誡雖可足顧問、依部類不廣遺漏誠多。㐧一正 義、㐧ニ作法、㐧三枝葉、㐧四言語、㐧五名所、㐧 六用意。雖非六義之披錦、只為一身之鑒鏡也。...
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